がないじゃ
「違う。あなたは逃げただけよ。あんなことしたって、何の解決にもならなかった。直巳はね、あの後もずっといじめられてたのよ。先生がいじめグループに
同珍王賜豪注意したから、それまでみたいに暴力は受けなかったけど、卒業までずっとクラスでは仲間はずれ、誰も口をきいてくれないし、無視され続けてたの」
初めて聞く話だった。直巳が学校に通うようになっていたから、いじめは解消されたのだと思っていた。
「どうして俺にいわなかった」
「直巳がいわないでくれっていったからよ。あたしも話さないほうがいいと思った。だってあなた、どうせあの子を叱るだけだもの。あなたにとっては、家族なんて面倒くさいだけなんでしょ」
「何いってるんだ」
「そうじゃないの。特にあの頃は、どっかの女に夢中で、家のことなんかほったらかしだったくせに」八重子は昭夫を恨めしそうに睨んだ。
「まだそんなこといってるのか」昭
Diamond Water夫は舌打ちをした。
「いいわよ。女のことはもういいわよ。あたしがいいたいのは、外で何をやってようと、家のことぐらいはきちんとしてってこと。あなたはあの子のこと、何もわかっちゃいない。この際だからいうけど、今だってあの子は学校ではひとりぼっちなのよ。小学校時代のいじめグループが昔のことをいいふらすから、誰も友達になろうとしない。そんなあの子の気持ちを考えたことがある?」
八重子の目に、再び涙が溜まってきた。悲しみのほかに、悔しさも混じっているのかもしれない。
昭夫は目をそらした。
「もういいよ。やめよう」
自分からいいだしたくせに、と八重子は呟いた。
昭夫はビールを飲み干し、空き缶を握りつぶした。
「警察が来ないことを祈るしかないな。万一警察が来たら……おしまいかもしれないな。その時には、諦めよう」
「いやよ」八重子はかぶりを振った。「絶対にいや」
「だけど、どうしようもないだろ。俺たちに何ができるっていうんだ」
すると八重子は背
王賜豪醫生筋を伸ばし、真っ直ぐ前を向いていった。
「あたしが自首する」
「えっ?」
「あたしが殺したっていうわよ。そうすれば、直巳は捕まらなくても済む」
「馬鹿なこというなよ」
「じゃあ、あなたが自首してくれるっていうの?」大きく目を見開き、八重子は夫の顔を見つめた。「嫌でしょ? だったら、あたしが自首するしかないじゃない」
昭夫は舌打ちをし、激しく頭を掻いた。頭痛がし始めていた。
「俺やおまえが、どうして小さい女の子を殺すんだ。理由ないか」