2016年02月23日
か無いような女に
健二は美智代の作ってくれたおかずをパクパク食いながら、友人達の近状を話していた。今日はどこそこへ行こう。こんな所はつまらない。あいつは相miris spa hk変わらずの馬鹿だと止めどがない。少年の面影を残し、少し赤みのかかった透き通るような肌をしている。怒ると素直に目がつり上がる。
健二がテーブルの上のリモコンを取り、CDの再生ボタンを押した。緩やかなリズムでTHE BANDのTears Of Rageが流れてきた。
「ああ、好きなんだこれ」と健二は二本目のビールを開けた。
第一京浜から山手通りに入り渋谷に着いたときには10時を回っていた。健二が新しくできた台湾屋台料理の店で腹ごしらえしようと言った。
プロデュースにも一枚噛んでてね、流行っ銅鑼灣按摩てんだと言う。店に入ると店を取り仕切っているらしい女が「健二、なに、ひさしぶり」と変なアクセントの日本語で健二に駆け寄ってきた。席はほぼ満席に近い。女が「ヨシダさん来てるよ」と振り返った。見ると奥の方で眼鏡をかけた吉田が手を振っている。健二は「ウゲッ」と言いながら、笑顔で手を振った。女がクスッと笑った。
「寺山さんひさしぶりじゃない。何してんの?」吉田は開口一番そう言った。
テーブルの上には皿がいくつも乗っていて様々な料理が盛られている。
「労働者さ。吉田さんみたいな旦那じゃないからな。しがないもんさ」
「なんだよ、きついなあ。俺だってたいへんなんだぜ。不況でテナントは入らないしなあ。まあ、飲んでよ」
吉田は連れのモデル崩れのような通り一遍の表情し、
「何やってんだ、お注ぎしろ」と言った。
吉田は渋谷の昔からの地主の家にどういうわけか養子におさまっている。妻子があり40に近い。自称サディストの色狂いである。
吉田は金縁の眼鏡の端をぴくぴく振るわせなDiamond水機がら「羽田の方だって」と言った。「ああ」と言いながら寺山は震えのとまらない吉田の眼鏡を取り、その目の周りを手のひらで覆い、少し揉んで「心配するなよ」と言った。吉田はされるがままに「うんうん」とうなづいた。
Posted by orae at 11:57│Comments(0)