2015年09月25日
拷問にかけ
家に帰った次郎吉、さわぎの結果を待つが、ちっとも町のうわさにならぬ。みっともないので役人たちがだまっているのだろう。そのうち、幕府で大はばな人事異動があったらしいとわかるが、それで終り。万事うやむやになってしまったようだ。面白くない。
彼は殿中でのさわぎを、おもしろおかしく物語にまとめた。それを持って草双紙の版元へ行く。
「ねずみ小僧を主人公に、こういうものを書いた。売れ能量水ると思うし、後世まで残るんじゃないかな。出版してもらいたい」
草双紙屋の主人、それを読み、顔をしかめる。
「こりゃあ、なんです。でたらめもいいところ。あまりにばかげてるので、お上も出版禁止にはしないでしょう。しかし、ねずみ小僧は庶民の偶像ですぜ。その印象をこんなふうにぶちこわしたら、わたしゃ、江戸っ子たちにぶんなぐられる。本にはできませんな。ねずみ小僧につ
いては、ちゃんとしたものを書くよう、ある作者にたのんであります」
せっかく書いたものは、目の前で破り捨てられた。次郎吉はがっかり。それから数日は、酒びたり。二日酔いつづきでごろごろしていると、そとで叫びながら走る声。
「大変だあ。ねずみ小僧さまがつかまったそうだ」
次郎吉は起きあがる。外出すると、どこでもそのうわさでもちきり。なんでも、浜町の松平|宮内少輔《くないしょうゆう》の屋敷に忍びこみ、殿さまの寝所に近づき、護衛役の女たちにとっつかまり、町奉行所の者に引き渡されたという。
なんということだ、と次郎吉はつぶやく。殿さまの寝所に金など數學科補習あるわけがない。それに、そこが最も危険な場所。おれがつかまらなかったのは、そこを注意して避けたからだ。わざわざつかまりに行くようなものだ。どこのどいつだ、そんな気ちがいじみたことをしたやつは。
しかし、つかまったやつは、気ちがいではなく、わざわざつかまりに入った男だった。大名家出入りの建具屋、星十兵衛のどら息子。両親の死んだあと、家業そっちのけで遊び暮し、店をつぶした。そのあと草双紙の作者となり、でまかせ話を書いてかすかに食いつないでいた。
そのうち同情した草双紙屋の主人に、実録物を書きなさい、いま人気のねずみ小僧がいい、売れますよとすすめられ、調査にかかった。
調査しはじめてみると、どうも、かつておやじのところで修業していた次郎吉がくさい。芝居の木戸番の子、建具の修業、火消しの鳶、条件がそろっている。聞きまわると、すごい人気だ。どう物語にまとめようか、訴えたらいくら金をもらえるかなど思案しているうちに、もっ
といいことを思いついた。おれがねずみ小僧になればいい。物語にしたってうまく書けっこない。おれが主人公になれば、後世に残るというものだ。
そして、松平家の屋敷に忍びこみ、不器用につかまったというしだい。だから、られると、すぐに白状した。大名家からの被害届けはいいかげんだから、その気になればいくらでもつじつまがあわせられる。次郎吉の能量水弟妹が奉行所に呼ばれ、あれが兄かと聞かれた。二
人は実の兄が処刑されるよりはと、そうだと答えた。
そして、処刑の日、薄化粧をさせられ、しばられて馬に乗せられ、町じゅう引回しとなる。
通りでの民衆の声はすごかった。
「庶民の神さま」とか「世なおし大明神」
彼は殿中でのさわぎを、おもしろおかしく物語にまとめた。それを持って草双紙の版元へ行く。
「ねずみ小僧を主人公に、こういうものを書いた。売れ能量水ると思うし、後世まで残るんじゃないかな。出版してもらいたい」
草双紙屋の主人、それを読み、顔をしかめる。
「こりゃあ、なんです。でたらめもいいところ。あまりにばかげてるので、お上も出版禁止にはしないでしょう。しかし、ねずみ小僧は庶民の偶像ですぜ。その印象をこんなふうにぶちこわしたら、わたしゃ、江戸っ子たちにぶんなぐられる。本にはできませんな。ねずみ小僧につ
いては、ちゃんとしたものを書くよう、ある作者にたのんであります」
せっかく書いたものは、目の前で破り捨てられた。次郎吉はがっかり。それから数日は、酒びたり。二日酔いつづきでごろごろしていると、そとで叫びながら走る声。
「大変だあ。ねずみ小僧さまがつかまったそうだ」
次郎吉は起きあがる。外出すると、どこでもそのうわさでもちきり。なんでも、浜町の松平|宮内少輔《くないしょうゆう》の屋敷に忍びこみ、殿さまの寝所に近づき、護衛役の女たちにとっつかまり、町奉行所の者に引き渡されたという。
なんということだ、と次郎吉はつぶやく。殿さまの寝所に金など數學科補習あるわけがない。それに、そこが最も危険な場所。おれがつかまらなかったのは、そこを注意して避けたからだ。わざわざつかまりに行くようなものだ。どこのどいつだ、そんな気ちがいじみたことをしたやつは。
しかし、つかまったやつは、気ちがいではなく、わざわざつかまりに入った男だった。大名家出入りの建具屋、星十兵衛のどら息子。両親の死んだあと、家業そっちのけで遊び暮し、店をつぶした。そのあと草双紙の作者となり、でまかせ話を書いてかすかに食いつないでいた。
そのうち同情した草双紙屋の主人に、実録物を書きなさい、いま人気のねずみ小僧がいい、売れますよとすすめられ、調査にかかった。
調査しはじめてみると、どうも、かつておやじのところで修業していた次郎吉がくさい。芝居の木戸番の子、建具の修業、火消しの鳶、条件がそろっている。聞きまわると、すごい人気だ。どう物語にまとめようか、訴えたらいくら金をもらえるかなど思案しているうちに、もっ
といいことを思いついた。おれがねずみ小僧になればいい。物語にしたってうまく書けっこない。おれが主人公になれば、後世に残るというものだ。
そして、松平家の屋敷に忍びこみ、不器用につかまったというしだい。だから、られると、すぐに白状した。大名家からの被害届けはいいかげんだから、その気になればいくらでもつじつまがあわせられる。次郎吉の能量水弟妹が奉行所に呼ばれ、あれが兄かと聞かれた。二
人は実の兄が処刑されるよりはと、そうだと答えた。
そして、処刑の日、薄化粧をさせられ、しばられて馬に乗せられ、町じゅう引回しとなる。
通りでの民衆の声はすごかった。
「庶民の神さま」とか「世なおし大明神」
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2015年09月23日
脳をうえかえ
「そうです。死刑になったのです。そして、生まれかわったのです。しかも、それがひじょうに科学的な生まれかわりかたなんです」
等々力警部は一同の顔を見まわしながら、
「古柳男爵が、世界的に有名な大生理学者であることは、さっきも話しましたね。そうです、古柳男爵は大生理学者でしたが、わけても脳の生理については、世界でも、くらべもののないほどの学者でした。そして、それについて男爵は世にもおそろしい発明をしたのです」
等々力警部の語るところによると、それは雋景探索40なんともいえぬおそろしい話だった。
人間のからだが死ぬといっしょに、脳も死んでしまうのは、いかにもざんねんなことである。すぐれた学者や、えらい芸術家の、ふしぎな働きをもつ脳を、からだとはべつに、いつまでも生かしておくことはできないだろうか……古柳男爵は、まずそう考えたのだった。
そこで古柳男爵は、人間のからだから、脳だけぬきとって、それを男爵がつくった、ある特別の生理的食塩水のなかで、保存することを思いついた。
男爵はまず、医科大学から研究用の死体を買ってきて、その研究をはじめた。しかしそれはだめだった。なぜかといって、その死体は死後あまり時間がたっていたので、脳の活力もすっかりなくなっていたからなのだ。
そこで、そのつぎには、交通事故のために死んだ人の死体を、死後すぐにひきとって、研究することにしたが、なんどもなんどもしっぱいしたのち、やがて、とうとう成功した。死後すぐに肉体からとりだされた脳は、生理的食塩水のなかで、りっぱに生きているのである。すなわち、これでわかったことは、年とってしぜんと死んだ人や、長い病気で死んだ人の脳は、脳そのものが年とっていたり、病気のために弱っているからだめだが、それに反して、災難などで急に死んだ人の脳を、できるだけ早いうちに取りだせば、りっぱに再生できるということがわかったのである。
しかし、男爵の研究も、それだけではなんにもならない。食塩水のなかにある脳は、いかに生活力をもっていても、なんの働きを示すこともできない。そこで男爵はまた、つぎのようなことを考えた。すなわちその脳を、べつの人間の頭にうえかえることを……。
「脳をうえかえるんですって?」
滋は思わずいきをはずませた。
「そうだよ。滋君。もしこのことに成功すれば、世にこれほどおそろしい発明はないでしょう。世間には、りっぱな脳を持ちながら、弱いからだになやんでいる人が多いいっぽう、知能はそれほどでもないが、からだだけは人なみすぐれてじょうぶな人間もいる。そういう人の脳をぬきとって、そのあとへ、すぐれたれば、それこそ頭脳もからだも、人なみすぐれた人間ができるではないか。……古柳男爵は、そう考えたのです。そして、一生けんめいに、その研究をしたのです」
「そして、古柳男爵はその研究に成功したのですか」
「そうです。成功したのです。だから古柳男爵は、いったん死刑になりながら、人に命じて、いちはやく脳をうえかえさせたために、ああいう怪物となって生きかえったのです」
ああ、なんというおそろしい話だろう。なんという気雋景探索40のわるい物語だろう。
滋や謙三、さては鏡三も、わきの下にびっしょりと、つめたい汗がにじみ出るのをおぼえずにはいられなかった。
等々力警部は一同の顔を見まわしながら、
「古柳男爵が、世界的に有名な大生理学者であることは、さっきも話しましたね。そうです、古柳男爵は大生理学者でしたが、わけても脳の生理については、世界でも、くらべもののないほどの学者でした。そして、それについて男爵は世にもおそろしい発明をしたのです」
等々力警部の語るところによると、それは雋景探索40なんともいえぬおそろしい話だった。
人間のからだが死ぬといっしょに、脳も死んでしまうのは、いかにもざんねんなことである。すぐれた学者や、えらい芸術家の、ふしぎな働きをもつ脳を、からだとはべつに、いつまでも生かしておくことはできないだろうか……古柳男爵は、まずそう考えたのだった。
そこで古柳男爵は、人間のからだから、脳だけぬきとって、それを男爵がつくった、ある特別の生理的食塩水のなかで、保存することを思いついた。
男爵はまず、医科大学から研究用の死体を買ってきて、その研究をはじめた。しかしそれはだめだった。なぜかといって、その死体は死後あまり時間がたっていたので、脳の活力もすっかりなくなっていたからなのだ。
そこで、そのつぎには、交通事故のために死んだ人の死体を、死後すぐにひきとって、研究することにしたが、なんどもなんどもしっぱいしたのち、やがて、とうとう成功した。死後すぐに肉体からとりだされた脳は、生理的食塩水のなかで、りっぱに生きているのである。すなわち、これでわかったことは、年とってしぜんと死んだ人や、長い病気で死んだ人の脳は、脳そのものが年とっていたり、病気のために弱っているからだめだが、それに反して、災難などで急に死んだ人の脳を、できるだけ早いうちに取りだせば、りっぱに再生できるということがわかったのである。
しかし、男爵の研究も、それだけではなんにもならない。食塩水のなかにある脳は、いかに生活力をもっていても、なんの働きを示すこともできない。そこで男爵はまた、つぎのようなことを考えた。すなわちその脳を、べつの人間の頭にうえかえることを……。
「脳をうえかえるんですって?」
滋は思わずいきをはずませた。
「そうだよ。滋君。もしこのことに成功すれば、世にこれほどおそろしい発明はないでしょう。世間には、りっぱな脳を持ちながら、弱いからだになやんでいる人が多いいっぽう、知能はそれほどでもないが、からだだけは人なみすぐれてじょうぶな人間もいる。そういう人の脳をぬきとって、そのあとへ、すぐれたれば、それこそ頭脳もからだも、人なみすぐれた人間ができるではないか。……古柳男爵は、そう考えたのです。そして、一生けんめいに、その研究をしたのです」
「そして、古柳男爵はその研究に成功したのですか」
「そうです。成功したのです。だから古柳男爵は、いったん死刑になりながら、人に命じて、いちはやく脳をうえかえさせたために、ああいう怪物となって生きかえったのです」
ああ、なんというおそろしい話だろう。なんという気雋景探索40のわるい物語だろう。
滋や謙三、さては鏡三も、わきの下にびっしょりと、つめたい汗がにじみ出るのをおぼえずにはいられなかった。
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2015年09月21日
何故かもの
「檳榔毛の車にも火をかけよう。又その中にはあでやかな女を一人、上※(「藹」の「言」に代えて「月」、第3水準1-91-26)の装(よそほひ)をさせて乗せて遣はさう。炎と黒煙とに攻められて、車の中の女が、悶え死をする――それを描かうと思ひついたのは、流石に天下第一の絵師ぢや。褒めてとらす。おゝ、褒めてとらすぞ。」
大殿様の御言葉を聞きますと、良秀は急に色を失つて喘(あへ)ぐやうに唯、唇ばかり動して居りましたが、やがて体中の筋が緩んだやうに、べたりと畳へ両手をつくと、
「難有い仕合でございまする。」と、聞えるか聞えないかわ雋景 課程からない程低い声で、丁寧に御礼を申し上げました。これは大方自分の考へてゐた目ろみの恐ろしさが、大殿様の御言葉につれてあり/\と目の前へ浮んで来たからでございませうか。私は一生の中に唯一度、この時だけは良秀が、気の毒な人間に思はれました。
それから二三日した夜の事でございます。大殿様は御約束通り、良秀を御召しになつて、檳榔毛の車の焼ける所を、目近く見せて御やりになりました。尤もこれは堀河の御邸であつた事ではございません。俗に雪解(ゆきげ)の御所と云ふ、昔大殿様の妹君がいらしつた洛外の山荘で、御焼きになつたのでございます。
この雪解の御所と申しますのは、久しくどなたも御住ひにはならなかつた所で、広い御庭も荒れ放題荒れ果てて居りましたが、大方この人気のない御容子を拝見した者の当推量でございませう。こゝで御歿(おな)くなりになつた妹君の御身の上にも、兎角の噂が立ちまして、中には又月のない夜毎々々に、今でも怪しい御袴(おんはかま)の緋の色が、地にもつかず御廊下を歩むなどと云ふ取沙汰を致すものもございました。――それも無理ではございません。昼でさへ寂しいこの御所は、一度日が暮れたとなりますと、遣(や)り水(みづ)の音が一際(ひときは)陰に響いて、星明りに飛ぶ五位鷺も、怪形(けぎやう)の物かと思ふ程、気味が悪いのでございますから。
丁度その夜はやはり月のない、まつ暗な晩でございましたが、大殿油(おほとのあぶら)の灯影で眺めますと、縁に近く座を御占めになつた大殿様は、浅黄の直衣(なほし)に濃い紫の浮紋の指貫(さしぬき)を御召しになつて、白地の錦の縁をとつた円座(わらふだ)に、高々とあぐらを組んでいらつしやいました。その前後左右に御reenex cps價錢側の者どもが五六人、恭しく居並んで居りましたのは、別に取り立てて申し上げるまでもございますまい。が、中に一人、眼だつて事ありげに見えたのは、先年陸奥(みちのく)の戦ひに餓ゑて人の肉を食つて以来、鹿の生角(いきづの)さへ裂くやうになつたと云ふ強力(がうりき)の侍が、下に腹巻を着こんだ容子で、太刀を鴎尻(かもめじり)に佩(は)き反(そ)らせながら、御縁の下に厳(いかめ)しくつくばつてゐた事でございます。――それが皆、夜風に靡(なび)く灯の光で、或は明るく或は暗く、殆ど夢現(ゆめうつゝ)を分たない気色で、凄く見え渡つて居りました。
その上に又、御庭に引き据ゑた檳榔毛の車が、高い車蓋(やかた)にのつしりと暗(やみ)を抑へて、牛はつけず黒い轅(ながえ)を斜に榻(しぢ)へかけながら、金物(かなもの)の黄金(きん)を星のやうに、ちらちら光らせてゐるのを眺めますと、春とは云ふものゝ何となく肌寒い気が致します。尤もその車の内は、浮線綾の縁(ふち)をとつた青い簾が、重く封じこめて居りますから、※(「車+非」、第4水準2-89-66)(はこ)には何がはいつてゐるか判りません。さうしてそのまはりには仕丁たちが、手ん手に燃えさかる松明(まつ)を執つて、煙が御縁の方へ靡くのを気にしながら、仔細(しさい)らしく控へて居ります。
当の良秀は稍(やゝ)離れて、丁度御縁の真向に、跪(ひざまづ)いて居りましたが、これは何時もの香染めらしい狩衣に萎(な)えた揉烏帽子を頂いて、星空の重みに圧されたかと思ふ位、何時もよりは猶小さく、見すぼらしげに見えました。その後に又一人、同じやうな烏帽子狩衣の蹲(うづくま)つたのは、多分召雋景 課程し連れた弟子の一人ででもございませうか。それが丁度二人とも、遠いうす暗がりの中に蹲つて居りますので、私のゐた御縁の下からは、狩衣の色さへ定かにはわかりません。
大殿様の御言葉を聞きますと、良秀は急に色を失つて喘(あへ)ぐやうに唯、唇ばかり動して居りましたが、やがて体中の筋が緩んだやうに、べたりと畳へ両手をつくと、
「難有い仕合でございまする。」と、聞えるか聞えないかわ雋景 課程からない程低い声で、丁寧に御礼を申し上げました。これは大方自分の考へてゐた目ろみの恐ろしさが、大殿様の御言葉につれてあり/\と目の前へ浮んで来たからでございませうか。私は一生の中に唯一度、この時だけは良秀が、気の毒な人間に思はれました。
それから二三日した夜の事でございます。大殿様は御約束通り、良秀を御召しになつて、檳榔毛の車の焼ける所を、目近く見せて御やりになりました。尤もこれは堀河の御邸であつた事ではございません。俗に雪解(ゆきげ)の御所と云ふ、昔大殿様の妹君がいらしつた洛外の山荘で、御焼きになつたのでございます。
この雪解の御所と申しますのは、久しくどなたも御住ひにはならなかつた所で、広い御庭も荒れ放題荒れ果てて居りましたが、大方この人気のない御容子を拝見した者の当推量でございませう。こゝで御歿(おな)くなりになつた妹君の御身の上にも、兎角の噂が立ちまして、中には又月のない夜毎々々に、今でも怪しい御袴(おんはかま)の緋の色が、地にもつかず御廊下を歩むなどと云ふ取沙汰を致すものもございました。――それも無理ではございません。昼でさへ寂しいこの御所は、一度日が暮れたとなりますと、遣(や)り水(みづ)の音が一際(ひときは)陰に響いて、星明りに飛ぶ五位鷺も、怪形(けぎやう)の物かと思ふ程、気味が悪いのでございますから。
丁度その夜はやはり月のない、まつ暗な晩でございましたが、大殿油(おほとのあぶら)の灯影で眺めますと、縁に近く座を御占めになつた大殿様は、浅黄の直衣(なほし)に濃い紫の浮紋の指貫(さしぬき)を御召しになつて、白地の錦の縁をとつた円座(わらふだ)に、高々とあぐらを組んでいらつしやいました。その前後左右に御reenex cps價錢側の者どもが五六人、恭しく居並んで居りましたのは、別に取り立てて申し上げるまでもございますまい。が、中に一人、眼だつて事ありげに見えたのは、先年陸奥(みちのく)の戦ひに餓ゑて人の肉を食つて以来、鹿の生角(いきづの)さへ裂くやうになつたと云ふ強力(がうりき)の侍が、下に腹巻を着こんだ容子で、太刀を鴎尻(かもめじり)に佩(は)き反(そ)らせながら、御縁の下に厳(いかめ)しくつくばつてゐた事でございます。――それが皆、夜風に靡(なび)く灯の光で、或は明るく或は暗く、殆ど夢現(ゆめうつゝ)を分たない気色で、凄く見え渡つて居りました。
その上に又、御庭に引き据ゑた檳榔毛の車が、高い車蓋(やかた)にのつしりと暗(やみ)を抑へて、牛はつけず黒い轅(ながえ)を斜に榻(しぢ)へかけながら、金物(かなもの)の黄金(きん)を星のやうに、ちらちら光らせてゐるのを眺めますと、春とは云ふものゝ何となく肌寒い気が致します。尤もその車の内は、浮線綾の縁(ふち)をとつた青い簾が、重く封じこめて居りますから、※(「車+非」、第4水準2-89-66)(はこ)には何がはいつてゐるか判りません。さうしてそのまはりには仕丁たちが、手ん手に燃えさかる松明(まつ)を執つて、煙が御縁の方へ靡くのを気にしながら、仔細(しさい)らしく控へて居ります。
当の良秀は稍(やゝ)離れて、丁度御縁の真向に、跪(ひざまづ)いて居りましたが、これは何時もの香染めらしい狩衣に萎(な)えた揉烏帽子を頂いて、星空の重みに圧されたかと思ふ位、何時もよりは猶小さく、見すぼらしげに見えました。その後に又一人、同じやうな烏帽子狩衣の蹲(うづくま)つたのは、多分召雋景 課程し連れた弟子の一人ででもございませうか。それが丁度二人とも、遠いうす暗がりの中に蹲つて居りますので、私のゐた御縁の下からは、狩衣の色さへ定かにはわかりません。
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16:24
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2015年09月20日
離婚してたん

朝から微妙な気分っす。
や、別にいいんだけどさ。。
大人だしさ。
付き合っててもいいけどさ。
つーかやっぱか。
うー。
40代で子沢山でも
離婚してお金に不自由なかったら
自由に綺麗な女子と恋愛reenex膠原自生できるもんなぁ。
これ逆だったら確率的にかなり少ないじゃん。
そういうとこ、男は自由がきくなーと思う。
誰にでもできるわけじゃないけど。
なんだか相当余計なお世話なのわかってんだけど
微妙な気分!!
15才のころのあ雋景 課程たしにとって吉井はん
あなたはスターでありました。
そっから15年かー。
まぁしばらくしたら自分のことでまた頭いっぱいになるからいーけど
朝の熱愛中ネタは力抜けました。
お幸願景村せに~。
Posted by orae at
12:22
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2015年09月16日
間違いない
ポルダーガイスト。何もしていないのに物が独りでに動き出す現象。
その現象は未だ解明おらず、しかし世界中で報告がある為。いつしかその現象は霊や超能力と言ったオカルト的な現象。と言う事で片づけられた。
無論僕が命の危機に瀕して霊能力に目覚めたわけでもなく、この中の誰かが魔法で動かしたわけではない。
ここでの霊は夜の闇にしか生息できず、朝の光と共に消え去っていくと言うのは、オーマが説明した通り。
だったら、これは……
「うわっ!」
「あ、ちょ、こら! 待ちなさい!」
そして今度こそ布団は僕の目の前で動き出した。風に晒されたわけでも誰かが払いのけたわけでもない。
明らかに”自分の意思で”動いていた。颯爽と現れた謎の布団は、風に乗って数秒程滑空した後、再び地面に降り僕らの目の前でモゾモゾとうねり出した。。もう一度確認しよう。
「布団が勝手に動いてる……」
「どきなさい!」
うねる布団の四方を山賊達が即座に囲み、手を腰に備えた武器にそっと乗せ、ウゾウゾと動く謎の布団を様子を伺っている。
ふいに山賊の一人が叫んだ。「てめえ! 何もんだ!」このセリフからわかる事は、この状況。
僕らは今、何者かの”襲撃”を受けている
「この人数を一人で相手にしようだなんて、いい度胸してるじゃない」
山賊をかき分け、前に出たオーマが布団に向かって挑発を仕掛ける。確かに、いい度胸してるな。
元傭兵に竜、そしてそれを率いる”魔王の軍勢”に単身で乗り込んでくるなんて……
「正体を現してから死ぬ? それとも何もできないまま死ぬ?」
魔女から魔王にクラスチェンジしたオーマが、いい感じに魔王っぽいセリフを放つ。成りきると言う意味ではバッチリだ。才能あるぞ、お前。
その言葉と同時に布団はうねりを止め、物干し竿の端にひっかかっ詩琳たようにダランとぶら下がっている。
空中に引っかかっているようにも見えるが、それは違う。引っかかっている部分。その頂上に薄らと、布ではない”形”が見える。
間違いない。布団の中に”何か”がいる
その現象は未だ解明おらず、しかし世界中で報告がある為。いつしかその現象は霊や超能力と言ったオカルト的な現象。と言う事で片づけられた。
無論僕が命の危機に瀕して霊能力に目覚めたわけでもなく、この中の誰かが魔法で動かしたわけではない。
ここでの霊は夜の闇にしか生息できず、朝の光と共に消え去っていくと言うのは、オーマが説明した通り。
だったら、これは……
「うわっ!」
「あ、ちょ、こら! 待ちなさい!」
そして今度こそ布団は僕の目の前で動き出した。風に晒されたわけでも誰かが払いのけたわけでもない。
明らかに”自分の意思で”動いていた。颯爽と現れた謎の布団は、風に乗って数秒程滑空した後、再び地面に降り僕らの目の前でモゾモゾとうねり出した。。もう一度確認しよう。
「布団が勝手に動いてる……」
「どきなさい!」
うねる布団の四方を山賊達が即座に囲み、手を腰に備えた武器にそっと乗せ、ウゾウゾと動く謎の布団を様子を伺っている。
ふいに山賊の一人が叫んだ。「てめえ! 何もんだ!」このセリフからわかる事は、この状況。
僕らは今、何者かの”襲撃”を受けている
「この人数を一人で相手にしようだなんて、いい度胸してるじゃない」
山賊をかき分け、前に出たオーマが布団に向かって挑発を仕掛ける。確かに、いい度胸してるな。
元傭兵に竜、そしてそれを率いる”魔王の軍勢”に単身で乗り込んでくるなんて……
「正体を現してから死ぬ? それとも何もできないまま死ぬ?」
魔女から魔王にクラスチェンジしたオーマが、いい感じに魔王っぽいセリフを放つ。成りきると言う意味ではバッチリだ。才能あるぞ、お前。
その言葉と同時に布団はうねりを止め、物干し竿の端にひっかかっ詩琳たようにダランとぶら下がっている。
空中に引っかかっているようにも見えるが、それは違う。引っかかっている部分。その頂上に薄らと、布ではない”形”が見える。
間違いない。布団の中に”何か”がいる
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2015年09月07日
な事なんて
「毒の沼、骸の街、廃人横丁、ホラ吹き砂漠。寄生遺跡……と後……」
「それらを超えて帝都側に回れば、今度は巨大生物の住処ですね」
「そうだった。ええと……なんつったっけ……変わった名前の……」
「巨人保育園っす。姉さん」
「そうそう、それそれ」
なんだその普通の単語におどろおどろしい形容詞を取ってつけたようだけのネーミングは!? なんでもかんでも継ぎ足せばいいってもんじゃないぞ!?
それになんだ、前半は大体の想像がつくが後半はまるで意ips整形味がわからん。なんだよ巨人保育園って。大きなお友達がマグマをプール代わりにして遊んでいるのか!?
「だから、山越えはむしろ安全なルートなのよ。しんどいだけで特に脅威はないしね」
そのしんどさが一番の脅威なんだよ。ブログで見たぞ。エベレストですら毎年何百人の遭難者が出てるとな。
死体が道しるべになっているような山だぞ? その4,5個分って、それもう頂上は宇宙空間だろ。
「帝都直々の勅命なんでしょ? あんまりチンタラしてるのもどうかと思いますぜ」
「あんまり待たせて元老院に変な疑いかけられるとか、アタシやーよ」
大魔女様曰く、僕がテロリストと知り合いだから匿お瑪姬美容 去印うとしていると疑われる可能性があるとの事らしい。
いやいや、勘弁してくれよ。平地のマラソンですら3分で根を上げる僕だぞ? そんな標高何万mの空気の薄い所で、オリンピックランナーレベルの高地トレーニングみたいやったら、僕はその場で倒れて二度と起き上がらないかもしれないんだぞ?
「ほんと、お荷物だわー……」
「姉さんどうします? あっしらは山越えとか結構慣れてますけど」
「アニキはどう見てもそんな風には見えませんぜ……」
じゃあむしろどんな風に見えるのか、聞品牌維護きたい。そこはかとなく聞きたい。
「しょーがないわねー。じゃあ麓に付く前に、こいつ用の薬草類を探しましょ」
2015年09月01日
戻ってきた
ここははっきりそう言っておかなければならない、でないと、父から謀反を疑われることになってしまう。
「では、私以外は降伏するが、私は降伏しないと言う条件で降伏させていただけないでしょうか」
彼は不思議な事を言い出す。
「いったい、どうしたいのです?」
「ドラールへの降伏は私のプライドが許さんのです。あなたに処刑してもらう方がまだましです」
また、混乱するような事を言い出す、私が人をDR Max 教材殺せるわけないじゃないか。
「あなたも含めて降伏しなさい」
メレッサは言ったが。
「私はメレッサ王女以外には降伏しません」
彼は強硬に断る。私にメレッサ王女を名乗れと言っているのか。でも、それは無理だ、名乗ったら謀反になる、娘でも父から処刑されるだろう。
「私は謀反を起こす気はありません。私はメレッサ.タイレムです」
はっきり言った。ミネーラは20年前に滅んだのだ、そんな亡霊を引きずっていてもしょうがない。
「では、先ほどの降伏条件で降伏します」
ミラルス王は直立の姿勢をとった。彼の決意は固いようだった。
「わかりました、その条件で結構です」
彼を処刑しなければ、この条件で鑽石能量水も結果は同じことになる。
作り直した降伏文書にミラルス王は署名した。
署名式が終わって、メレッサは控え室に。セラブ提督やコリンスも一緒だ。
「ミネーラの事をもっと詳しく教えて下さい」
自分の事なのに、なぜ私だけ知らないのか、腹が立つ。
「ミネーラ王家は20くらいの星を従えた小さな王家です。皇帝の攻撃を受け王族は母君を除いて全員死んだと聞いております」
そんなひどい事があったのか。
「その事は誰でも知っていることなんですか?」
あの会場の中で私だけが知らなかったなんて、ひどい話しだ。
「たぶん、みんな知っていると思います。ただ、微妙な話ですので、姫君の方DR Max 教材から話題にしない限り、この話を姫君にする者はいないと思います」
それで、私はこの話にまったく気がつかなかったんだ。
「では、私以外は降伏するが、私は降伏しないと言う条件で降伏させていただけないでしょうか」
彼は不思議な事を言い出す。
「いったい、どうしたいのです?」
「ドラールへの降伏は私のプライドが許さんのです。あなたに処刑してもらう方がまだましです」
また、混乱するような事を言い出す、私が人をDR Max 教材殺せるわけないじゃないか。
「あなたも含めて降伏しなさい」
メレッサは言ったが。
「私はメレッサ王女以外には降伏しません」
彼は強硬に断る。私にメレッサ王女を名乗れと言っているのか。でも、それは無理だ、名乗ったら謀反になる、娘でも父から処刑されるだろう。
「私は謀反を起こす気はありません。私はメレッサ.タイレムです」
はっきり言った。ミネーラは20年前に滅んだのだ、そんな亡霊を引きずっていてもしょうがない。
「では、先ほどの降伏条件で降伏します」
ミラルス王は直立の姿勢をとった。彼の決意は固いようだった。
「わかりました、その条件で結構です」
彼を処刑しなければ、この条件で鑽石能量水も結果は同じことになる。
作り直した降伏文書にミラルス王は署名した。
署名式が終わって、メレッサは控え室に。セラブ提督やコリンスも一緒だ。
「ミネーラの事をもっと詳しく教えて下さい」
自分の事なのに、なぜ私だけ知らないのか、腹が立つ。
「ミネーラ王家は20くらいの星を従えた小さな王家です。皇帝の攻撃を受け王族は母君を除いて全員死んだと聞いております」
そんなひどい事があったのか。
「その事は誰でも知っていることなんですか?」
あの会場の中で私だけが知らなかったなんて、ひどい話しだ。
「たぶん、みんな知っていると思います。ただ、微妙な話ですので、姫君の方DR Max 教材から話題にしない限り、この話を姫君にする者はいないと思います」
それで、私はこの話にまったく気がつかなかったんだ。