2016年02月23日

しか覚えてい

「リモコン入ってんだけどやってみる?」と吉田がポケットからピンク色のマッチ箱のようなものを取り出した。
「いや、いい。俺の前でスイッチ鑽石水入れるなよ。飯がまずくなる」
 吉田は哀しそうに笑ってそれをポケットに仕舞った。 寺山は女に目をやり溜息をつき「お楽しみ中わるいね」と言った。 女は「いえ」と伏し目がちの睫を少し振るわせた。
 吉田の金でさんざん飲み食いし店を後にしたのは一時を回ったころだった。払うと言っても吉田はきかない。健二がいいからほっとけ金持ちなんだからと寺山の背中を押した。店を後にしても吉田はついて来たがったが連れの女の足許がおぼつかない。何してんだ馬鹿!と吉田の声が背中に聞こえる。しばらくして吉田だけが追いついてきた。「女は?」と訊くと「置いてきた」と言う。
しばらくして健二が「泣いてるかもな」と言った。「ああ、泣いてるな」と寺山が続けた。「泣いてるかな?」と吉田が不安げに訊いた。「絶対泣いてるね」能量水 新聞と寺山が言った。吉田は立ち止まり「ちょっと戻ってみる。リモコンもったいないしね」と唇の端をゆがめて笑い、「また!」と手をあげてきびすを返した。

 ……女は中国に子供が居て妹に預けてあると言った。中国の暦のはじめの月の七日には毎年帰ると言っていた。旦那は死んだと言った。以前、中国に行ったことがあると寺山は言った。女に問われるままに、「厦門へ」と。海産物を扱う会社の社長達の視察に同行したと。女ははなぜか華やかなまでの笑みを浮かべた。
「夏だったからね。暑かったなあ、ビールが美味かったことくらいない」
「青島ビール?」
「うん、他の銘柄は見たことがない」
 女は世界で一番おいしいと言った。
 不意に思い出した。あのときの曲だ。コンクリートの床に水を打った店先。物憂げな海風。ラジオを聴きながら、うたた寝をする店番の老婦──。「なぜ日本に?」と寺山はもう一度訊いた。「あなたのような人がいるからよ」と女は寺山の首にすがりつき「縛る?」と訊いた。寺山が鑽石能量水 問題黙っていると「日本人、縛るの好きだから」と女は耳元で囁いた。「日本人はみんな変態だってか?」
 女はうれしそうに「うん」とうなづいた。
  


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2016年02月23日

か無いような女に


 健二は美智代の作ってくれたおかずをパクパク食いながら、友人達の近状を話していた。今日はどこそこへ行こう。こんな所はつまらない。あいつは相miris spa hk変わらずの馬鹿だと止めどがない。少年の面影を残し、少し赤みのかかった透き通るような肌をしている。怒ると素直に目がつり上がる。
 健二がテーブルの上のリモコンを取り、CDの再生ボタンを押した。緩やかなリズムでTHE BANDのTears Of Rageが流れてきた。
「ああ、好きなんだこれ」と健二は二本目のビールを開けた。

 第一京浜から山手通りに入り渋谷に着いたときには10時を回っていた。健二が新しくできた台湾屋台料理の店で腹ごしらえしようと言った。
プロデュースにも一枚噛んでてね、流行っ銅鑼灣按摩てんだと言う。店に入ると店を取り仕切っているらしい女が「健二、なに、ひさしぶり」と変なアクセントの日本語で健二に駆け寄ってきた。席はほぼ満席に近い。女が「ヨシダさん来てるよ」と振り返った。見ると奥の方で眼鏡をかけた吉田が手を振っている。健二は「ウゲッ」と言いながら、笑顔で手を振った。女がクスッと笑った。
「寺山さんひさしぶりじゃない。何してんの?」吉田は開口一番そう言った。
 テーブルの上には皿がいくつも乗っていて様々な料理が盛られている。
「労働者さ。吉田さんみたいな旦那じゃないからな。しがないもんさ」
「なんだよ、きついなあ。俺だってたいへんなんだぜ。不況でテナントは入らないしなあ。まあ、飲んでよ」
 吉田は連れのモデル崩れのような通り一遍の表情し、
「何やってんだ、お注ぎしろ」と言った。
 吉田は渋谷の昔からの地主の家にどういうわけか養子におさまっている。妻子があり40に近い。自称サディストの色狂いである。
 吉田は金縁の眼鏡の端をぴくぴく振るわせなDiamond水機がら「羽田の方だって」と言った。「ああ」と言いながら寺山は震えのとまらない吉田の眼鏡を取り、その目の周りを手のひらで覆い、少し揉んで「心配するなよ」と言った。吉田はされるがままに「うんうん」とうなづいた。  


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